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コラム
木崎伸也のシュヴァルべを探せ 第6回

森保ジャパンの対策は「合議制」、可変をパターン化し戦略に落とし込む「世界基準」に対抗し得るのか

By 木崎伸也 | 2022.11.21

日本代表は世界の流れから取り残されているのではないか? そんな不安を抱かせる一戦だった。

日本は11月17日、ドバイでカナダと親善試合を行なった。1対2という結果そのものは、負傷から復帰した選手のテストを兼ねていたことを考えると問題視されるものではないだろう。新たな負傷者が出ずに終われたことも収穫だった。

臨機応変な可変、は世界の流れ


だが、状況に応じて変化するという点では、明らかにカナダの方が上回っている試合だった。

たとえばビルドアップだ。

カナダの基本陣形は4−4−2で、ビルドアップの際に流れに応じて右ボランチのハッチンソン(ベジクタシュ)が右斜め下に降りるというやり方を採用していた。その際、右サイドバックのジョンストン(モントリオール)は高い位置を取り、一時的に3−3−4に可変するようなイメージである。

それがうまくいったのが前半17分だ。右斜め下に降りたハッチンソンがボールを持ち出し、高い位置に張ったジョンストンにパス。ジョンストンが浮き球のパスを斜めに出し、デイビット(リール)がペナルティエリア内で受けることに成功した。結局、この流れでカナダはCKを獲得する。

日本は9月のドイツ遠征から4−4−2のプレスに取り組み始め、アメリカ戦の前半に大きな手応えを得た。しかし同時に、アメリカが後半から3バックに変更した際、日本は対応できず、「試合中の修正」という課題にも直面した。

ドイツ遠征中、日本代表の選手たちはミーティングを開いて「3バックの相手にどうプレスをかけるか?」を話し合ったそうだ。しかし、少なくともこのカナダ戦ではその成果は見られなかった。

世界基準は『対策への対策』まで準備済み


後半、カナダはさらなる変化を見せてきた。2人のセンターバックの間にボランチが落ちる可変(スペイン語圏ではサリーダ・ラボルピアーナと呼ばれている)の回数を増やしたのだ。

後半2分、日本はその形でプレスをかわされてしまう。縦パスを通され、その流れからゴール前に迫られてしまった。後半3分には(サリーダ・ラボルピアーナによる)3バックともう1人のボランチのパス交換によって、再びプレスをかいくぐられた。

カナダの「引き出し」はまだあった。後半26分、右サイドバックのジョンストンに代えてセンターバックのウォーターマン(モントリオール)を投入し、完全な3バック(3−1−4−2)に移行したのである。

可変ではない完全な3バックシステムに変化されたことで、ここから日本代表のプレスはさらにかからなくなってしまう。

おそらくカナダには「ビルドアップの際、誰が3バックの位置に入ってもいい」という原則があるのだろう。ボランチが3バックに降りてくると、代わりにセンターバックが前に行くという場面も見られた。

日本が後半40分に吉田麻也を投入して3バックに変更し、システムを「鏡合わせ」にするまで、カナダに完全にゲームを支配されてしまった。この試合で日本のパフォーマンスが最も悪かった時間帯は、この14分間だっただろう。

セットプレーも戦略的に変化させる


カナダはセットプレーの「変化」も豊富だった。

板倉滉がマークしていた188cmのラリンは、CKの1本目と2本目においてはファーサイドへ動いていた。おそらく板倉は3本目もファーに行くと考えたのではないだろうか。板倉はラリンから距離を取って立ち、相手が動いてからそれについていこうとしていた。

しかし、ラリン(クラブ・ブルッヘ)が狙ったのはニアサイドだった。ラリンは自陣方向に膨らむように戻ってからニアへ走り込んだ。チームとしてその動きをサポートすべく、ハッチンソンが板倉の動き出しをブロックした。

これによって板倉はマークを見失ってしまう。ハッチンソンをマークしていた酒井宏樹がラリンを追いかけたが、その結果、ハッチンソンがフリーになってしまった。

ハッチンソンが右足で合わせ、最後はヴィトーリア(シャヴェス)がボールをゴールマウスに流し込んだ。

ヨーロッパのクラブではCKの1本目ではパターン1をやり、2本目ではパターン2をやるといった戦略を立てるチームが増えている。

4年前は結果が出たが、時代は変わっている


まさにカナダはそれをやっていた。ここではラリンの動きに注目したが、他の選手を見ると1本目と2本目で動きが異なっていた(たとえばミラーは1本目はゴールエリアのライン上を走ってニアへ向かったが、2本目はペナルティスポット付近からニアに近づいた)。

板倉がブロックされた背景には、1本目と2本目の駆け引きがあったのだ。

森保ジャパンは選手どうしの話し合いでチームを作り込み、選手たちの自由な発想を生かすやり方を採用している。西野ジャパンはその手法で2018年W杯で一定の成績を残した。

だがあれから4年が経ち、サッカーの戦術はさまざまな面で細かくなっている。状況に応じて変化するチームが激増している。ロシア大会ではかろうじて通用したが、選手たちの話し合いによるチームづくりは時代遅れになってしまったのではないか――カナダ戦を観戦し、そう感じずにはいられなかった。

新しいやり方を採用すれば勝てるわけではない。だが、相手の出方を抑えるうえで、時代の潮流はしっかり押さえておかなければならないだろう。

写真提供:getty images


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